出雲大社

コラム

「二礼四拍手一礼」の神社はどこ?なぜ参拝のやり方が違うのか解説

神社参拝の基本といえば、「二礼二拍手一礼」。
誰もがそう教わってきたはずですが、実は例外ともいえる「手を4回打つ(二礼四拍手一礼)」が正式な作法とされる神社が存在することをご存じでしょうか?

「えっ、出雲大社だけじゃないの?」
「4回も手を打つなんて、何か特別な意味があるの?」

そんな疑問を持つ方へ向けて、この記事では「二礼四拍手一礼」を行う代表的な3つの神社と、なぜ回数が多いのかという意外な理由・由来について徹底解説します。

「四」という数字に込められた「幸せ」への願いを知れば、次の参拝がもっと味わい深いものになるはず。
正しい作法を身につけて、神様とのご縁をしっかり結びましょう。

二礼四拍手一礼(二拝四拍手一拝)を行う代表的な神社はどこ?

クエスチョンマーク
一般的な神社の参拝作法は「二礼二拍手一礼」ですが、全国に数万社ある神社の中で、「二礼四拍手一礼」を正式な作法としている有名な神社が3社存在します。

「作法を間違えて恥をかきたくない」「ご利益をしっかり頂きたい」という方のために、四拍手を行う代表的な神社と、それぞれの特徴をご紹介します。

1. 出雲大社(島根県):縁結びの最強スポット

出雲大社
「いずもおおやしろ」と読む出雲大社は、日本で最も有名な四拍手の神社と言えるでしょう。

縁結びの神様として知られる大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)をお祀りしており、通常の参拝において「二礼四拍手一礼」を行うことが公式の作法とされています。

境内には作法を記した案内板もありますが、事前に知っておくことで、慌てずに心を落ち着けてお参りすることができます。

2. 宇佐神宮(大分県):全国4万社ある八幡宮の総本社

宇佐神宮
大分県宇佐市にある宇佐神宮も、四拍手を行う代表的な神社の一つです。

ここは、全国に約4万社あるといわれる「八幡宮(八幡様)」の総本宮です。実は、近所の氏神様である八幡宮は「二拍手」であることが多いのですが、総本宮である宇佐神宮では古くから「二礼四拍手一礼」が受け継がれています。

勝負運や厄除けのご利益でも有名ですので、参拝の際は力強く四回手を打ちましょう。

3. 弥彦神社(新潟県):越後国一の宮として崇敬される古社

弥彦神社
新潟県にある弥彦神社(やひこじんじゃ)は、「おやひこさま」の愛称で親しまれる越後国の一の宮です。

万葉集にも詠まれるほどの歴史を持つこの古社でも、出雲大社や宇佐神宮と同様に「二礼四拍手一礼」で拝礼を行います。

弥彦神社は開拓の神様としても知られており、新しいことを始める際や、仕事運向上を願う参拝客が多く訪れます。荘厳な雰囲気の中で行う四拍手は、身が引き締まる特別な体験となるはずです。

その他

東京都世田谷区の桜神宮
他にも、東京都世田谷区の桜神宮や福井県福井市の出雲大社福井分院などが「二礼四拍手一礼」を行う神社とされています。

※桜神宮は、公式サイト上(参拝方法)で「二拝四拍手一拝」と明記。東京都内では数少ない「二礼四拍手一礼」を採用。
※出雲大社福井分院(出雲大社教系)は公式サイト(解説コラム内)で「二礼四拍手一礼」と具体手順を説明。一般に「分院」等は“神社(本社)”とは別枠(教団施設)ですが、参拝作法として明記があるため本記事に掲載しました。

また、一部メディア等において、島根県松江市の熊野大社や佐賀県鹿島市の祐徳稲荷神社などで「二礼四拍手一礼」を行うとする言及がありますが、これらは誤りです。

神社名 所在地 作法 誤認される理由
熊野大社 島根県松江市 二礼二拍手一礼 出雲大社と同じ「出雲国一宮」であり、地理的に近いため混同されやすい。しかし、公式サイトおよび島根県神社庁の資料では明確に「二拍手」と規定されています。一部の動画等で四拍手と紹介されることがあるが、公式見解に従うと誤りと言えます。
祐徳稲荷神社 佐賀県鹿島市 二礼二拍手一礼 九州の有力社であり、宇佐神宮(四拍手)と同じ九州に位置することから混同される場合がありますが、公式には一般的な作法の二礼二拍手一礼を挙げています。
出雲大神宮 京都府亀岡市 二礼二拍手一礼 名称に「出雲」を冠し、「元出雲」とも称されるため、島根の出雲大社と同じ作法と思われることが誤認の原因か。しかし、別の神社法人であり、基本作法は二拍手となっています。
大神神社
(三輪明神)
奈良県桜井市 二礼二拍手一礼 日本最古の神社の一つであり、独自の信仰形態(三輪山自体が御神体)を持ちますが、拝礼作法に関しては標準的な二拍手が基本。

なぜ例外の「四拍手」なのか?拍手の数が多い3つの理由と意味

神社で参拝する男女
一般的な「二拍手」と異なり、なぜ特定の神社では「四拍手」を行うのでしょうか。実は、その由来には諸説あり、断定的な一つの正解があるわけではありません。

しかし、古くから語り継がれている主な3つの有力な説を知ることで、参拝時の気持ちの込め方も変わってくるはずです。

理由1:「四(し)」=「幸せ」を呼び込むため

数字の「4」は「死」を連想させるため日本では忌み数とされることが多いですが、神道においては捉え方が異なります。

「四」を「し」と読み、「四合わせ(しあわせ=幸せ)」に通じるという縁起の良い意味合いが込められています。神様と「幸せ」を合わせる、あるいは多くの幸せを呼び込むという、非常にポジティブな願いがこの四回という数字に表れています。

理由2:四季や東西南北の神々に敬意を表すため

日本古来の信仰では、自然界のあらゆるものに神が宿ると考えられています。

四拍手の「四」は、「春夏秋冬」の四季と、「東西南北」の四方を守護する神々への感謝と敬意を表しているという説です。宇佐神宮などでは、この「四方の神々」への祈りが四拍手の由来の一つと考えられています。

理由3:最も格式高い「八拍手」の略儀であるため

神道において「8」という数字は、「八百万(やおよろず)の神」と言われるように「無限」や「聖なる数」を意味します。

神様への最高の敬意を表す作法は、実は「八開手(やひらで)」と呼ばれる8回の拍手です。しかし、8回はあまりに格式が高く、日常の参拝で行うには恐れ多いとされます。

そのため、8回の半分の「4回」を日常の作法(略儀)として定めたという説が有力です。つまり、通常の二拍手よりも、より丁寧で格式高い祈りの形と言えるでしょう。

出雲大社はさらに特殊?「四礼八拍手一礼」との違い

出雲大社
「出雲大社は4回手を打つ」と広く知られていますが、実はさらに回数の多い「八拍手」が存在することをご存じでしょうか。

インターネット上や書籍によっては「出雲大社の正式な作法は八拍手だ」と書かれていることもあり、混乱してしまう方もいるかもしれません。ここでは、「四拍手」と「八拍手」の明確な違いについて解説します。

通常は「二礼四拍手一礼」、神職や祭典では「八拍手」

結論から言うと、私たち一般の参拝者が行う作法は、あくまで「二礼四拍手一礼」で間違いありません。

しかし、年に一度の最も重要な神事である5月14日の「例大祭(勅祭)」においてのみ、神職は「八拍手」を行います。

この8回の拍手は「八開手(やひらで)」と呼ばれ、数字の「八」が持つ「無限」や「完全」という意味から、神様に対して限りない拍手をおくる最高の敬意を表しています。

普段の参拝では、この「八開手」の半分である「四拍手」を、日常の作法(略儀)として行うのが習わしとなっています。そのため、特別な指示がない限り、私たちは四拍手でお参りを行いましょう。

【番外編】他にもある!特殊な参拝作法を持つ神社

ここまで「四拍手」の神社を紹介してきましたが、日本全国を見渡すと、さらに独特な拍手の数や礼拝を行う神社も存在します。

一般的にはあまり知られていない、少しマニアックな参拝作法の世界を覗いてみましょう。

伊勢神宮の神職が行う「八開手(やひらで)」

「日本人の心のふるさと」と言われる伊勢神宮(三重県)。

私たち一般参拝者は「二礼二拍手一礼」でお参りしますが、神職が神事の際に行う作法は異なります。ここでも、「八開手(やひらで)」と呼ばれる8回の拍手が行われています。

出雲大社と同じく、「8」という数字が持つ最大限の敬意を表すものであり、古代から続く神道の奥深さを感じさせる作法です。

3回拍手や3回お辞儀をする地域の神社

非常に珍しいケースですが、特定の地域や古い信仰を残す神社では、「3回」を区切りとする作法も存在します。

例えば、九州の一部の神社や、修験道(山岳信仰)の影響を強く受けた神社などでは、3回手を打ったり、3回深くお辞儀をしたりする独自の風習が残っていることがあります。

これらは「三位一体」や「天・地・人」など、その土地特有の教えに基づいていることが多く、旅先で小さな神社を訪れた際には、地元の人の参拝方法を観察してみると新しい発見があるかもしれません。

郷に入っては郷に従う!参拝前に確認したい基本マナー

参拝する男性
「もし間違えたら神様に失礼かも……」と心配になる方もいるかもしれませんが、最も大切なのは形式そのものよりも「敬う心」です。

特殊な作法を持つ神社へ行く際も、基本の心構えは変わりません。ここでは、迷った時の判断基準と、より美しく参拝するためのコツをご紹介します。

作法がわからない時はどうする?(看板や掲示の確認)

参拝作法が特殊な神社の多くは、手水舎の柱や、お賽銭箱の横などに作法を記した案内板(立て札)が設置されています。

まずは拝殿の前で一呼吸置き、周囲を見渡してみましょう。もし案内板がなく、周囲に倣うべき参拝者もいない場合は、一般的な「二礼二拍手一礼」を行えば問題ありません。

神様は、作法の些細な違いよりも、あなたが足を運び手を合わせたこと自体を受け入れてくださるはずです。

拍手の打ち方のコツ(右手を少し引く意味)

二回でも四回でも、拍手(柏手・かしわで)を打つ際のコツは共通しています。

両手をぴったり合わせるのではなく、右手を指の第一関節ほど下に少しずらして打ちましょう。手のひらを少し膨らませるようにすると、パン!と清々しい良い音が響きます。

また、手をずらすことには「神と人とがまだ一体ではない」ことを示し、拍手を打ち終わった後に再び指先を揃えることで「神と人とが一つになった(願いが届いた)」ことを表すという意味も込められています。

まとめ:形式にとらわれすぎず、心を込めて「二礼四拍手一礼」を

結んであるおみくじ
今回は、一般的な作法とは異なる「二礼四拍手一礼」を行う神社とその理由について解説しました。

出雲大社、宇佐神宮、弥彦神社といった名社では、「四(し)=幸せ」や「四季・四方」への感謝、そして神様への深い敬意を表すために、四回の拍手が受け継がれています。

初めて訪れる際は緊張するかもしれませんが、大切なのは完璧にこなすことよりも、神社の歴史や伝統を尊重し、静かな心で神様に向き合うことです。

もし手順を間違えてしまっても、慌てなくて大丈夫です。深呼吸をして、心を込めて手を合わせれば、その気持ちはきっと神様に届くでしょう。ぜひ次回の参拝では、その神社ならではの作法を通じて、より深いご縁を感じてみてください。

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