初詣や旅行で神社やお寺を訪れた際、お賽銭箱の前で「あれ? ここは手を叩くんだっけ?」と不安になった経験はありませんか?
周りの人の真似をしてなんとなく済ませてしまいがちですが、実は「神社」と「お寺」では、拝礼の作法やお賽銭の意味合いが大きく異なります。
本記事では、間違えやすい「拍手(柏手)」の有無をはじめ、お賽銭の金額の目安や、願い事を伝える際の正しい手順について徹底解説します。違いを正しく理解して、迷わずスマートに参拝できる大人のマナーを身につけましょう。
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神社とお寺の違いとは?見た目の違いや見分け方を解説
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一目でわかる!神社とお寺の参拝方法の最大の違い

神社とお寺、どちらも「手を合わせる」という点では同じですが、拝礼(お祈り)の動作には決定的な違いがあります。それは、「音を鳴らすか、鳴らさないか」という点です。
細かな作法を忘れてしまったとしても、この一点さえ押さえておけば、現地で大きなマナー違反をしてしまうことはありません。
神社は「音を鳴らす」(二礼二拍手一礼)
神社での参拝の基本は、パンパンと手を叩いて音を鳴らすことです。
これを「柏手(かしわで)」と言います。神様をお招きするため、あるいは自分が邪気のない素手で来たことを証明し、敬意を表すために行います。一般的には「二礼二拍手一礼(2回お辞儀、2回拍手、1回お辞儀)」が基本作法となります。
お寺は「音を鳴らさない」(合掌一礼)
一方、お寺での参拝の基本は、音を立てずに静かに手を合わせることです。
これを「合掌(がっしょう)」と言います。仏教において右手は仏様、左手は自分自身(衆生)を表し、両手を合わせることで仏様と一体になることを意味します。お寺では決して拍手は打たず、胸の前で静かに手を合わせ、心を込めて祈ります。
【神社】の正しい参拝手順:鳥居から拝礼まで

神社は神様の家であり、境内は神聖な領域です。入り口から拝殿まで、心を整えながら進む正しい手順を解説します。
1. 鳥居をくぐり参道を歩く際のマナー
鳥居は神様の領域と私たちの住む世界を隔てる「結界」です。鳥居をくぐる際は、まず帽子を取り、一礼をしてから足を踏み入れます。これは他人の家にお邪魔する時に「お邪魔します」と挨拶するのと同じことです。
また、参道の中央は「正中(せいちゅう)」と呼ばれ、神様の通り道とされています。人間が堂々と真ん中を歩くのは失礼にあたるため、端に寄って歩くのがマナーです。
2. 手水舎(ちょうずや)での身の清め方
拝殿に進む前に、手水舎で手と口を清めます。これは「禊(みそぎ)」という儀式を簡略化したもので、心身の汚れを落とす重要な意味があります。
- 右手で柄杓(ひしゃく)を持ち、水を汲んで左手を洗います。
- 柄杓を左手に持ち替え、右手を洗います。
- 再び柄杓を右手に持ち、左手のひらに水を受けて口をすすぎます。
※柄杓に直接口をつけないよう注意しましょう。 - もう一度左手を洗います。
- 最後に柄杓を立てて、残った水で柄(持ち手)を洗い流し、元の場所に戻します。
3. お賽銭を入れて「二礼二拍手一礼」
拝殿の前に着いたら、以下の手順で拝礼を行います。
- お賽銭・鈴:お賽銭を静かに入れます。鈴がある場合は、神様に自分が来たことを知らせるために鳴らします。
- 二礼(にれい):姿勢を正し、深く2回お辞儀をします(90度が目安)。
- 二拍手(にはくしゅ):胸の高さで両手を合わせ、右手を指一本分ほど下にずらして、パンパンと2回手を打ちます。その後、指先を揃えて祈りを捧げます。
- 一礼(いちれい):最後にもう一度、深く1回お辞儀をして下がります。
【お寺】の正しい参拝手順:山門から合掌まで

お寺は仏様がいらっしゃる空間であり、修行の場でもあります。静粛な気持ちで、山門から本堂へと進んでいきましょう。
1. 山門をくぐる際のマナー(敷居は踏まない)
お寺の入り口にある門を「山門(さんもん)」と言います。くぐる前に帽子を取り、本堂に向かって一礼します。
この時、最も注意したいのが足元です。山門の下にある「敷居(しきい)」は踏まないようにまたいで通るのがマナーです。敷居を踏むことは、その家の主の頭を踏むことと同じとされ、大変失礼な行為にあたります。
※一般的に男性は左足から、女性は右足から入ると良いとされていますが、まずは「敷居を踏まない」ことを意識すれば十分です。
2. 常香炉(じょうこうろ)があれば煙を浴びる
本堂の手前に、お線香をあげる大きな香炉が置かれていることがあります。これを「常香炉」と言います。
ここから立ち上る煙には、心身を清める力や、体の悪い部分を癒やす力があると信じられています。手であおぐようにして煙を自分の体にあてて(浴びて)から、本堂へ進みましょう。
3. お賽銭を入れて静かに「合掌一礼」
本堂の前に着いたら、以下の手順で参拝します。神社と違い、拍手は打ちません。
- お賽銭・鰐口:お賽銭を静かに入れます。頭上に「鰐口(わにぐち)」と呼ばれる平たい鐘があれば、綱を振って鳴らします。
- 合掌(がっしょう):胸の前で静かに両手を合わせます。この時、手は叩きません。指先を揃え、音を立てずに合わせるのがポイントです。
- 祈願・一礼:合掌したまま一礼し、心の中で感謝や願い事を唱えます(宗派のお経や「南無阿弥陀仏」などを唱える場合もあります)。
- 終了:最後に軽く一礼をして下がります。
いくらが正解?お賽銭の意味と金額の目安

参拝の際、「お賽銭はいくら入れればいいの?」「10円玉は縁起が悪いって本当?」と迷うこともあるでしょう。結論から言えば、金額に決まりはありませんが、神社とお寺で少し意味合いが異なることを知っておくと、より心を込めることができます。
お賽銭には「感謝」と「修行」の意味がある
私たちが何気なく投げ入れているお金には、それぞれの宗教で大切な意味が込められています。
- 神社の場合:神様への「感謝」
古くは、お米や織物を神様に捧げていましたが、貨幣経済の発達とともにお金に変わりました。つまりお賽銭は、願いを叶えてもらう対価ではなく、「日頃の感謝を伝えるお供え物」なのです。 - お寺の場合:執着を捨てる「修行」
仏教においてお金を納めることは「お布施(おふせ)」の一種です。自分のお金(欲)を手放すことで、執着を捨てて徳を積む修行の一つとされています。
縁起の良い金額(5円・11円・45円など)
金額に決まりはありませんが、日本語の語呂合わせで「縁起が良い」とされる金額を入れるのも楽しみの一つです。
- 5円:「ご縁」がありますように。
- 11円:「いい縁」に恵まれますように。
- 45円:「始終ご縁(しじゅうごえん)」がありますように。
逆に「10円は遠縁(縁が遠のく)」と言われることもありますが、これらはあくまで迷信に近いものです。大切なのは語呂合わせよりも、ご自身が「気持ちよく出せる金額」であることです。無理をする必要はありません。
願い事はどう伝える?名前や住所は言うべき?

手を合わせた際、いきなり「お金持ちになれますように!」と願い事を唱えていませんか?実は、神様や仏様に願いを聞き届けてもらうためには、正しい伝え方の手順があります。
まずは「自己紹介(住所・氏名)」から
神前・仏前に立ったら、願い事を言う前に、まずは自分が「どこの誰なのか」を名乗りましょう。
心の中で「住所」と「氏名」を唱えます。神様や仏様は多くの人々を見守っていらっしゃるため、あなたが誰なのかをはっきりと伝えることが礼儀とされています。
これは、目上の方や恩人に挨拶に行くとき、まずは自分の名前を名乗るのと同じことです。
「お願い」よりも「感謝」と「誓い」を
自分の名前を伝えたら、次は「願い事」ですが、ここにもポイントがあります。一方的に「〇〇してください」と頼むのではなく、「感謝」と「決意(誓い)」をセットで伝えるのが作法です。
- 悪い例:「試験に合格しますように」
- 良い例:「いつもお見守りいただきありがとうございます(感謝)。試験合格に向けて精一杯勉強しますので(決意)、お力添えをお願いします(祈願)」
神様や仏様は、努力する人を後押ししてくれる存在です。丸投げするのではなく、「自分も頑張ります」という誓いを立てることで、より強いご加護が得られると言われています。
まとめ:形式も大切だが「敬う心」が一番のマナー

ここまで、神社とお寺の参拝方法の違いについて解説してきました。
最も大切な違いは、拝礼の際に「神社は手を叩く(拍手)」「お寺は静かに手を合わせる(合掌)」という点です。これさえ覚えておけば、基本はバッチリです。
しかし、もし手順を間違えてしまったり、順序が前後してしまったりしても、焦る必要はありません。神様や仏様は、作法を少し間違えた程度で怒るような心の狭い存在ではないからです。
作法とは、心を整えるための「型」に過ぎません。一番のマナーは、形式を完璧にこなすことではなく、「神仏を敬い、感謝する心」を持つことです。
ぜひ、あまり難しく考えすぎず、リラックスした気持ちで神社やお寺を訪れてみてください。心が洗われるような清々しい時間が、あなたを待っているはずです。