東国三社のひとつ鹿島神宮

コラム

東国三社巡りとは?おすすめの順番や車で巡るルートも解説

「お伊勢参りの禊(みそぎ)の三社参り」として、古くから信仰を集める「東国三社」。茨城県と千葉県にまたがるこの3つの神社は、関東最強クラスのパワースポットとして知られています。

この記事では、東国三社の由来やご利益はもちろん、効率よく回るための「おすすめの順番」や、車を使った日帰りモデルコース、そして話題の「合体するお守り」について詳しく解説します。

東国三社(とうごくさんしゃ)とは?ご利益と歴史

クエスチョンマーク
関東地方にお住まいの方や、神社巡りが好きな方なら一度は耳にしたことがあるかもしれない「東国三社」。
近年では、最強のパワースポット巡りとして雑誌やメディアで取り上げられることも増えました。
しかし、具体的にどの神社を指し、どのような歴史があるのかを詳しく知る人は意外と少ないかもしれません。
まずは、東国三社の基本的な定義と、古くから伝わる信仰の歴史について紐解いていきましょう。

鹿島神宮、香取神宮、息栖神社の総称

東国三社とは、茨城県と千葉県の県境エリアに鎮座する、以下の3つの神社の総称です。

  • 鹿島神宮(かしまじんぐう):茨城県鹿嶋市
  • 香取神宮(かとりじんぐう):千葉県香取市
  • 息栖神社(いきすじんじゃ):茨城県神栖市

これら3社は利根川の下流域に位置しており、地図で見ると互いに近い距離にあることがわかります。
特に鹿島神宮と香取神宮は、大和朝廷の時代から東国(関東・東北)の守護神として極めて重要視されてきました。
平安時代の書物『延喜式神名帳』において、「神宮」の称号を与えられていたのは、伊勢神宮以外にはこの鹿島と香取の2社のみでした。これだけでも、いかに別格の存在であったかが分かります。

江戸時代から続く「お伊勢参りの禊」という歴史

東国三社巡りが広く一般に知られるようになったのは、江戸時代のことです。
当時、庶民の間で一生に一度の夢として大流行した「お伊勢参り(伊勢神宮への参拝)」。
関東以北の人々は、伊勢神宮へ参拝した帰りに、「下三宮参り(しもさんぐうまいり)」と称してこの東国三社を巡るのが定番のルートでした。

伊勢神宮で最高神である天照大神に祈りを捧げた後、東国三社を巡ることで「禊(みそぎ)」を行い、旅を締めくくるという意味合いがあったとされています。
このことから、東国三社巡りは「お伊勢参りと同等のご利益がある」とも「お伊勢参りの仕上げ」とも言われる特別な巡礼路として定着しました。

地図上でトライアングルを描く不思議な配置

東国三社が「関東最強のパワースポット」と呼ばれる理由の一つに、その配置の妙があります。
地図上で3つの神社を線で結ぶと、きれいな二等辺三角形(トライアングル)が浮かび上がります。

さらに、このトライアングルの中には、「伊勢神宮」や「富士山」、「明治神宮」、「皇居」などが一直線に並ぶ「レイライン(聖なる線)」が通っているという説もあります。
(参考:パワースポットの重要拠点・東国三社|神栖市観光協会

この不思議な位置関係から、東国三社で囲まれたエリアは強力なエネルギーが集まる場所と考えられており、人生の転機や大きな決断をする際に訪れる人が後を絶ちません。

東国三社それぞれの見どころと特徴

東国三社は、単に「3つの神社」というだけでなく、それぞれに祀られている神様も違えば、持っている「ご神徳(ご利益)」や境内の雰囲気も全く異なります。
どの神社も非常に歴史が深く、見どころが満載です。参拝前にそれぞれの特徴を知っておくことで、より深くそのパワーを感じることができるでしょう。

鹿島神宮:「すべての始まり」を司る勝利の神様

鹿島神宮
茨城県鹿嶋市に位置する鹿島神宮(かしまじんぐう)は、創建が神武天皇元年(紀元前660年)と伝えられる、関東最古の神社の一つです。
祀られているのは「武甕槌大神(タケミカヅチノオオカミ)」。神話の国譲りの際に活躍した、武道と勝利の神様です。

その力強さから、「ここぞという勝負時」や「新しいことを始める時」に参拝すると良いとされています。旅立ちを意味する「鹿島立ち」という言葉の語源にもなりました。
東京ドーム15個分とも言われる広大な「鹿島の森」や、底が見えるほど澄み切った「御手洗池(みたらしいけ)」など、境内には神秘的な空気が漂っています。

香取神宮:己の道を見定める「決断」の神様

香取神宮
千葉県香取市にある香取神宮(かとりじんぐう)は、鹿島神宮と対をなす存在として知られています。
御祭神は「経津主大神(フツヌシノオオカミ)」。鹿島の神様とともに国譲りを成功させた、剣術にも秀でた神様です。

香取神宮のご利益として有名なのが「決断力」や「勝運」です。迷いを断ち切り、自分の進むべき道を照らしてくれると言われています。
朱塗りの楼門をくぐった先にある漆黒の拝殿は、威厳と美しさを兼ね備えています。また、地震を鎮めるとされる「要石(かなめいし)」は鹿島神宮にも存在し、地中でつながっているという伝説も残っています。

息栖神社:静寂に包まれた「厄除け・招福」の神様

息栖神社
鹿島・香取の2社が「武神」として勇ましい雰囲気を持つのに対し、茨城県神栖市にある息栖神社(いきすじんじゃ)は、穏やかで優しい空気に包まれています。
御祭神は、厄除けや道案内の神様である「久那戸神(クナドノカミ)」です。
(※御祭神は久那斗神(主神)。相殿に天乃鳥船神、住吉三神を祀ります。)

この神社の大きな特徴は、一の鳥居の両脇にある「忍潮井(おしおい)」と呼ばれる井戸です。
伊勢の明星井、伏見の直井と並び、日本三霊泉の一つに数えられています。
海水と淡水が混ざり合う汽水域にありながら、真水が湧き出る不思議な井戸です。
縁結びや円満のご利益があるとされ、静かに心を整えたい方に特におすすめのスポットです。

【結論】東国三社巡りに「正しい順番」はあるのか?

CHECK
東国三社を巡ろうと計画を立てる際、誰もが最初にぶつかる疑問が「どの順番で回るのが正解なのか?」という点です。
「間違った順番で回るとご利益がなくなるのでは…」と不安になる方もいるかもしれませんが、ご安心ください。
ここでは、古くからの習わしや現代の交通事情を踏まえた、おすすめのルート選びの考え方について解説します。

公式な決まりはない!自由に巡ってOK

まず結論から申し上げますと、東国三社巡りに「絶対にこの順番でなければならない」という公式な決まりはありません
神社側も特定の順序を指定しているわけではなく、どの神社から参拝しても、ご利益や功徳に変わりはないとされています。

鹿島神宮、香取神宮、息栖神社の三社は、それぞれが独立した素晴らしい神社であり、神様同士の仲も良いため、喧嘩をするようなことはありません。
ご自身のスケジュールや宿泊地、その日の気分に合わせて、一番回りやすいルートで自由に参拝して大丈夫です。

「鹿島立ち」に習うなら鹿島神宮がスタート?

決まりはないとはいえ、「せっかくなら歴史や由緒に沿った順番で巡りたい」という方もいるでしょう。
そのような方には、「鹿島神宮」をスタート地点にする順番をおすすめします。

日本には古くから、旅立ちや新しいことを始めることを意味する「鹿島立ち(かしまだち)」という言葉があります。
これは、かつて防人(さきもり)や武士たちが旅立つ際、鹿島神宮で道中の無事を祈願したことに由来します。
この故事にならい、鹿島神宮(スタート)→ 息栖神社 → 香取神宮(決断・締めくくり)という流れで巡るのが、ストーリー性としては美しいと言えるかもしれません。

地理的効率を優先したルート選び

精神的な意味合いよりも、「いかに効率よく回るか」を重視する場合は、高速道路のインターチェンジ(IC)からのアクセスで決めるのが正解です。

東京方面から車で向かう場合、東関東自動車道を利用することになります。

  • 香取神宮からスタート:手前の「佐原香取IC」で降りる場合
  • 鹿島神宮・息栖神社からスタート:終点の「潮来(いたこ)IC」まで行く場合

どちらのICを利用するかによって、自然と最初の神社が決まります。
無理に行ったり来たりせず、一筆書きでスムーズに移動できるルートを選ぶことが、心穏やかに参拝するための最大の秘訣です。

【車で日帰り】東国三社を効率よく巡るおすすめルートと所要時間

茨城県神栖市の街並み
東国三社巡りは、電車とバスを乗り継いで行うことも可能ですが、本数が限られているため難易度が非常に高いのが現実です。
効率よく、かつ疲れすぎずに3社を制覇するには、やはり車(マイカーやレンタカー)での移動が圧倒的におすすめです。
ここでは、日帰りでスムーズに回るためのモデルコースと、所要時間の目安をご紹介します。

三社間の移動距離と所要時間の目安

東国三社は、地図上で見るとお互いが非常に近い距離にあります。
それぞれの神社間の移動にかかる時間は、渋滞がなければ以下の通りです。

  • 香取神宮 ⇔ 息栖神社:車で約25分
  • 息栖神社 ⇔ 鹿島神宮:車で約20分
  • 鹿島神宮 ⇔ 香取神宮:車で約20分

(参考:よくある質問|鹿島神宮公式ホームページ
移動時間だけなら合計1時間ちょっとですが、各神社での参拝や御朱印待ち、食事休憩を含めると、トータルで「5時間〜6時間」ほど見ておくと安心です。
朝9時頃に最初の神社に到着すれば、ランチを挟んで夕方前には余裕を持ってコンプリートできます。

高速道路(東関東自動車道)を使った最強ルート

東京・千葉方面から「東関東自動車道」を使ってアクセスする場合、無駄なく回るためのポイントは「息栖神社を真ん中にする」ことです。
以下の2つのパターンのどちらかがおすすめです。

【パターンA:香取神宮からスタート】
佐原香取IC → 香取神宮 →(小見川大橋経由)→ 息栖神社 → 鹿島神宮 → 潮来ICへ
※決断の神様から入り、最後に始まりの神様で締めるルートです。

【パターンB:鹿島神宮からスタート】
潮来IC → 鹿島神宮 → 息栖神社 →(息栖大橋経由)→ 香取神宮 → 佐原香取ICへ
※鹿島立ち(旅立ち)から始め、帰りは佐原の古い町並みで観光して帰るルートです。

駐車場は無料?混雑しやすい時間帯と対策

車で巡る際に気になるのが駐車場事情ですが、東国三社は比較的整備されています。

  • 香取神宮:無料駐車場あり(参道商店街近くなどは人気ですぐ埋まります)
  • 息栖神社:無料駐車場あり(比較的停めやすいです)
  • 鹿島神宮:有料・無料あり(大鳥居近くは有料が多いですが、少し歩く御手洗池近くに無料駐車場があります)

注意点として、お正月や祭礼の時期、ゴールデンウィークなどは周辺道路が大渋滞します。
通常の土日であればそこまで心配いりませんが、混雑を避けるなら「朝一番(9時前)」に一番人気の鹿島神宮か香取神宮を済ませてしまうのが、スムーズに巡るための鉄則です。

絶対に手に入れたい!三社を巡って完成させる「東国三社守」

東国三社巡りが人気を集めている大きな理由のひとつに、「三社を巡ることで初めて完成する特別なお守り」の存在があります。
ただ参拝するだけでなく、RPGのクエストのようにアイテムを集めていくプロセスは、旅のモチベーションをグッと高めてくれるはずです。
ここでは、そのお守りの仕組みと入手方法について解説します。

三角柱に3つの神紋を貼る!お守りの入手方法

その話題のお守りとは、「東国三社守(とうごくさんしゃまもり)」です。
これは三角柱の形をした木製のお守りで、最初の神社で本体を受け、残り2社で各社の社紋(パーツ)を受けて本体に“はめ込む(貼り付ける)”ことで完成するタイプのお守りです。

どこの神社からスタートしても大丈夫です。
3つの神様の力が宿った完成品を手にすると、言葉にできない達成感と安心感に包まれます。

御朱印集めのポイント

お守りと合わせて集めたいのが、神社の参拝証明である「御朱印(ごしゅいん)」です。
東国三社の御朱印は、どれも力強く格式高いデザインで人気があります。

各神社にはオリジナルの御朱印帳も用意されていますが、特に鹿島神宮や香取神宮の御朱印帳はデザインが美しく、お土産としても喜ばれます。

また、時期によっては「三社すべての御朱印を集めた方への記念品」(ポストカードやステッカー、木札など。※内容は時期により変動。あくまでも対応は変わる可能性があるため、授与所等で事前に要確認。)が用意されていることもあります。
御朱印を集めている方は、最後の神社で「三社分揃いました」と伝えてみると、良いことがあるかもしれません。

参拝の合間に食べたい!東国三社周辺のランチ・グルメ

鹿島神宮のだんご
パワーをチャージするのは心だけではありません。せっかく遠出をしたのなら、その土地ならではの美味しいものを食べて、お腹も満たしたいものです。
東国三社の周辺は、利根川や海に近いことから、水郷ならではのグルメや新鮮な海産物が豊富です。
ここでは、参拝ルートに組み込みたいおすすめのランチや軽食をご紹介します。

香取神宮参道の草だんごと蕎麦

ランチや休憩スポットとして最も充実しているのが、香取神宮の参道商店街です。
駐車場から鳥居までの道のりには、昔ながらのお土産屋さんや食事処が軒を連ね、活気ある雰囲気が漂っています。

ここで絶対に外せないのが名物の「厄落とし団子(草だんご)」です。
柔らかいお餅にたっぷりのあんこやきな粉がかかっており、参拝後の疲れを癒やしてくれます。お土産用はもちろん、店先でお茶と一緒にいただくのも風情があります。
また、参道には老舗のお蕎麦屋さんも多く、カツ丼とお蕎麦のセットなどは参拝客の定番ランチとして愛されています。

潮来・鹿島エリアの鰻(うなぎ)や海鮮料理

利根川や霞ヶ浦に面したこのエリア(特に潮来や佐原周辺)は、古くから「水郷(すいごう)」と呼ばれ、川魚料理が発達してきました。
中でも「鰻(うなぎ)」は絶品です。
甘辛いタレで香ばしく焼き上げられた鰻重は、少し贅沢なランチにぴったり。人気店は行列ができることも多いため、時間をずらすか予約をするのが賢明です。

また、鹿島神宮のある鹿嶋市は海(鹿島灘)に面しているため、新鮮な海鮮料理も楽しめます。
特に「鹿島灘ハマグリ」はブランド食材として有名で、濃厚な旨味が特徴です。海沿いの道の駅や食堂で、お刺身や焼きハマグリを堪能するのも、このルートならではの楽しみ方です。

まとめ:東国三社巡りで最強のパワーをチャージしよう

香取神宮
今回は、関東最強のパワースポットと名高い「東国三社巡り」について、その由来や効率的な巡り方を解説しました。
鹿島神宮、香取神宮、息栖神社。この三社はそれぞれ異なる魅力を持ち、車であれば半日で十分に巡ることができます。
何より、三つの力を合わせたお守りが完成した時の達成感は、実際に足を運んだ人だけが味わえる特別なものです。

日々の忙しさに追われて少し疲れている時や、人生の大きな決断を控えている時こそ、この地を訪れてみてください。
江戸時代の人々が「お伊勢参りの仕上げ」として大切にしたこの巡礼路で、強力な勝運と決断力、そして癒やしのパワーをチャージし、明日からの活力を養ってみてはいかがでしょうか。
あなたの東国三社巡りが、素晴らしい旅になることを願っています。

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